こんにちは。ぱにです。

医学系の研究室で博士号取得を目指しています。
この記事では、世界最大級の総合コンサルティングファームであるアクセンチュアについて、博士課程の僕が新卒選考に挑んだリアルな体験を共有します。
「博士なら研究職でしょ?」その固まったキャリアの常識に、僕は一度立ち止まりました。
研究職ではないポジションに、理系の博士学生が本当に馴染めるのか。そう自問しながら飛び込んだインターン選考を経て、僕は特別選考ルートから内定をいただくことができました。
タイトルはごめんなさい、多少の自慢が入っています。
ただし、博士課程で積み上げた思考力・検証力のポテンシャルがある人なら、誰でも再現可能だと本気で思っています。だからこそ、むしろこの自慢はとっても虚しいのです。
アクセンチュアを志望する大学生・修士学生はもちろん、「博士のキャリアは研究職だけじゃない」という視点を持ち始めた博士学生にとって、自分の可能性を一段広げるための具体的なケースとして読んでもらえたら嬉しいです。
博士の就活については以下の記事も参考になります。
目次 非表示
就活体験記については、有料記事とさせていただきますのでご了承ください。
企業概要
基本情報
| 設立 | 1995年12月(日本法人) |
| 売上高 | 7,200億円(2024年8月期、食品29位) |
| 平均年齢 | 30歳前半(複数の企業口コミサイトより) |
| 主な事業領域 | コンサルティング/システム構築/業務改革など |
| 採用HP | 新卒採用 | アクセンチュア |
勤務・待遇
| 初任給 | 月額基本給:400,000円(大卒・院卒・高専専科卒) |
| 平均年収 | 850-900万円(複数の企業口コミサイトより) |
| 勤務地 | 東京オフィス(東京都港区) みなとみらいオフィス・関西オフィス |
| 福利厚生 | フレックス制度・在宅勤務制度 年次有給休暇(年間15日から20日) 各種社会保険 アクセンチュア健康保険組合提供のカフェテリアプラン 確定拠出年金制度 従業員株式購入プラン 住宅手当 |
| 採用実績 | 301名〜(2027年度募集)(1,000名程度と言われている) |
Accenture 360° Value Report 2024
360°バリュー=財務価値・社会価値・人材・サステナビリティ・技術革新を同時に最大化する経営
- サステナビリティは企業成長の前提
- 生成AIは価値創造の中核
- ステークホルダー価値の同時最大化
- 人材・学習投資は持続的競争優位
- 「社会的価値 × 事業成長」を統合する経営
参考:360° Value Report: Delivering Value From Every Angle | Accenture
企業理念・求める人材
存在意義(パーパス)
テクノロジーと人間の創意工夫でまだ見ぬ未来を実現する
そして、すべてのステークホルダーに全方位型価値(360度バリュー)を提供する
未来のアクセンチュアに必要なDNA
- 背伸びをしてでも目標へ手を伸ばさずにはいられない
- チャレンジに、手加減をしない
- 自分も会社も世の中までも、変えたいと望む
- 常に次のステージを見据え、自らの開拓に貪欲である
- タフな状況も、先頭に立ち楽しめる情熱がある
- あるべき姿を追求するためには、立場や関係性を超えた主張を厭わない
- 信念に基づき、主張し、実際にやりとげる
- チームワークの可能性を信じる
- 多様な文化、相違する意見の中にこそ宝石があると知っている
- 常に誠実さを失わず、言行一致の気概がある
参考:インクルージョン&ダイバーシティ | アクセンチュア、求める人材像 ~未来のアクセンチュアに必要なDNA~ | アクセンチュア
就活体験記
選考フロー(26卒)
インターンシップ申し込み
エントリーシート(締切:6月18日)・Webテスト(締切:7月1日)
↓
グループディスカッション(オンライン、7月17日)
↓
個人面接(ケース面接)(オンライン、8月2日)
↓
和魂偉才塾 コンサルティング塾(東京、第4ターム(9/25~9/27))
↓
本選考(特別選考ルート)エントリーシート(締切:10月23日)
↓
2次面接(最終面接)(オンライン、12月3日)
応募
和魂偉才塾 コンサルティング塾 → デジタルコンサルティング職
エントリーシート設問
インターンシップ
◆「和魂偉才塾 コンサルティング塾」を通して学びたいこと、得たいことを教えてください。(300文字以上400文字以下)
学びたいことは二つある。一つ目に、ITコンサルのパイオニアである貴社の、IT開発力や導入のスピード感といった強みを学びたい。私は大学院で、〜〜を軸とするITの力を駆使して研究を発展させ、3度の学会発表という成果を挙げることができた。この経験から、テクノロジーの秘める潜在能力を引き出し、社会へ貢献することを志すようになった。実践的なワークの中で、高度なITを活用した社会貢献の実際を具体的に掴み、将来の働き方に対する解像度を高めたい。二つ目に、一メンバーとしてチーム全体の課題解決力を推進するスキルを獲得したい。大学院での研究活動を通して、課題の背景や論点を瞬時に構造化して議論を推進する力や、現状に満足せず貪欲に結果を求める向上心を磨いてきた。次なるステージとしてこれらの能力を発展させ、多様な背景を持つメンバーを先導・サポートして、チームの最大限を引き出すためのスキルの獲得に挑戦したい。
理系大学院が母数のほとんどを占める研究職とは異なり、文系学部生等もたくさん応募することを想定すると、博士課程まで進み研究をしてきたことがなによりも強みになります。すでにITを活用して実績を積んでいること、また研究活動を通して培ったことの2点でアピールしました。
◆あなたがチームの一員として課題に取り組む際に意識している点を挙げ、それがチームにどのような価値を提供したか、具体的な経験や成果を交えて教えてください。(300文字以上400文字以下)
チームが納得感をもって業務に取り組めるように、行動の意図を的確に説明する点を意識している。私はかつて結婚式場でのアルバイトに6年間取り組み、その間に全店舗で下位25%未満だった月間ゲスト満足度を第四位まで押し上げた経験がある。アシスタントとしてアルバイトを統括する立場にあった私は、無愛想なサービスへの指摘が多いという課題に直面した。原因として、スタッフがゲストと最低限の言葉しか交わさないため、結果的に態度がそっけなく映ることに気づいた。そこで、料理長から各コース料理のポイントをスタッフへ直接共有してもらい、スタッフにはこれらをヒントに料理説明を工夫することで、ゲストとの自然な会話を期待している旨を丁寧に説明した。その結果、スタッフの接客に笑顔が増え、加えてゲストとの距離が縮まった副次効果として、写真撮影や毛布の貸し出しといった要望にも応えられるようになり、月間のゲスト満足度向上に繋がった。
ここも普段の研究のことを書くことも考えましたが、「具体的な成果」をアピールするのが難しく、ありがちではありますがアルバイトの話を書きました。結論→課題→施策→成果という、ありふれた型通りに書くということが読みやすさの上で重要です。
本選考
◆「未来のアクセンチュアに必要なDNA」のうち共感できるものを1つ選んでください。
※「未来のアクセンチュアに必要なDNA」
信念に基づき、主張し、実際にやりとげる
◆アクセンチュアを「社員一人ひとりの自己実現のプラットフォーム」と考えたとき、選択したDNAに沿ってアクセンチュアを志望する理由と、アクセンチュアで実現したいことを教えてください。(300文字以上400文字以下)
貴社を志望する理由は、ITを適材適所に落とし込んだ実現性の高い変革を顧客へ提供することに対する、貴社の本気のこだわりに惹かれたからだ。私は和魂偉才塾への参加を通して、顧客に確かな価値を還元できる提案を実際にやりとげるためには、AIをはじめとするITを深く理解することがまず重要であることを学んだ。さらにクライアントファーストの精神で変革の必要性を顧客に訴えかけることに加え、最適解として選択したテクノロジーを実業務や実システムに組み込んでいく力が必要であることを痛感した。IT領域の専門性を高めることで、空理空論に終わることのない実行フェーズまで意識されたロジカルで隙がない打ち手を、堅実にドライブできる人材へと成長していきたい。そしてDX推進によって、転換期に直面する金融業界における新しいスタンダードの創出をアクセンチュアで実現し、多様な顧客ニーズに応えるまだ見ぬ未来の金融サービスを構築したい。
以前にESを書いたときと比較して、インターンに参加したことが新たに獲得した最大のアピールポイントだと思ったので、これを前面に押し出して書きました。さらに当たり前ですが、選択した「未来のアクセンチュアに必要なDNA」のエッセンスをインターンで学んだ、とすることで、非常に自然な構成になりました。最後、具体的なインダストリーを明記しておくという意図はありますが、金融であることにはあまり意味がないです。
◆アクセンチュアに関して理解を深めていただける動画を下記にいくつかご用意しています。特に興味のある動画を選択してください。 上記動画を選択した理由と、動画を閲覧してご自身が感じたことを教えてください。(300文字以上400文字以下)
②AccentureとGoogleによる自動配車とルート最適化ソリューションのご紹介
選択した理由は、物流クライシスを克服するためのAIテクノロジーの最前線を学び、本システムの優位性と次なる課題についての考察を通して物流業界の課題に対する理解を深めるためだ。既存の配車システムは、手作業での配車業務の効率化や属人化の解消に焦点を当てるものであった。本システムではさらに、GoogleのAIアルゴリズムを活用しデータを永続的に学習させることで、EC需要の増加で多様化する配送ニーズに起因する複雑な配送条件に対しても、最適化された配送計画を早く算出できるという強力な優位性を持つと考える。またGoogle mapベースのGUIはドライバー側のユーザビリティの点でも優れており、2024年問題を背景とするラストワンマイル物流の労働力不足解消に直結すると感じた。その一方で将来、配車計画作成の人的リソースを0にするためには、本システムの活用を通して教師データをさらに蓄積する必要があると考える。
アクセンチュアの提供する技術についてコメントする方が、これまでのES回答と重複や一貫性について考えずに、そのトピックだけに向き合えていいと思ったので、選びました。動画を見て、出てきたキーワードやその分野について調査して、範囲広く課題を洗い出し、そのソリューションでどの課題は対応できていて(→優れている点)どの課題は手付かずなのか(→今後の展望)整理して書くと、それっぽくなる気がします。
Webテスト
GAB(英語あり)
Webテスト全般に言えるのですが、博士課程まで進むような方々であれば、対策せずとも足切りをもらうことはないと思います(母数が博士課程だけの選考はまた別かもですが)。ただ初見は焦る可能性が高いので、分厚い青い本1冊だけ借りて、行き帰りの電車で非言語の解き方を知っておくと良さげな問題や言語の知識問題を眺めておけば余裕だと思います。
グループディスカッション
学生6人+社員さん1人、オンライン
与えられる時間は35分、最後に代表者が1人で5分で発表する、質疑あったかも?、最後フィードバックがあって解散
テーマは教育系で、具体的な数字を要求される課題だったが、フェルミと呼ぶほどのものではない
やる気に満ち溢れた学生が多く、スタートした瞬間から役割分担決めと時間配分決めと、機械的に決められるものはどんどん決まっていきました。僕自身はこういうとき、一旦様子見して客観的に引きで考えてしまうのですが、オンラインでGDやっていると、必ず割って入れそうな間ができるので、そのタイミングでクリティカルなことを言ったり、正しい方向に導いてあげるようなコメントを残したり、みたいな感じで(結果的に)立ち回ってました。最後の発表者の白羽の矢が立ったので、5分ぴったりで発表したらすごい褒められました(普段から発表時間を守る意識が役に立ちました)。
個人面接(ケース面接)
社員さん1人、オンライン
入室後早速ケースの課題を提示され、10分考える時間を与えられ5分で意見を発表、その後ディスカッション10分・フィードバック5分、残りを人物面接
テーマは労働環境系、フェルミはなし
ケース面接は初だったので事前に調べはしたものの、正直あまりイメージが掴めないまま本番を迎えました。提案もITで解決するといった薄い施策しか出ず、シンキングタイムはずっと焦っていた記憶があります。そのため、数を出すよりも一つの施策を論理的に膨らませる方針に切り替え、前提条件や背景を自分なりに整理して、相手が聞きやすい話にまとめることを意識しました。また、その後のディスカッションでは面接官の方が話題を広げてくださり、弾切れの自分にとっては追い風でした。緊張する場面ではあったものの、素直に考えを言葉にしていたら時間が終了し、面接とは思えないほどフィードバックも親切で、多くの学びがありました。人物面接は一般的な質問で、志望動機やガクチカを伝えて終わりです。
和魂偉才塾 コンサルティング塾
day1:オープニング、事前課題解説、ワーク解説、ワーク
day2:ワーク
day3:ワーク、課題提出、発表(各10分)、振り返り、面談、(懇親会)
学生6人で1グループで計5グループ、各グループに1人メンターがつき、ワークの間に1on1面談が2回
課題は流通系、成果については比較的自由度が高い
どのように時間を使うかは各グループ次第、ワークの途中にクライアントとの模擬面接がある
最後にクライアントに見立てた社員の方にプレゼンテーション
ポイント:課題設定・論点の抽出と構造化・各論点に対する具体的な中長期施策・効果・支援内容と強み・スケジュール
わかってはいましたが、とにかく時間が足りません。どんなに進みが悪くても残業は許されず、常に作業か議論をしている状態で、1日が終わるころにはちゃんと疲労感がありました。参加前は、どんな学生が集まるかを見ながら立ち回りをコントロールするつもりでいましたが、議論を積極的に引っ張ってくれる方がいたため、リーダーシップはその方に任せる形に。僕は、課題理解を深めた上で建設的な意見を出したり、軌道修正したり、分業時には議論を回しながら全体を把握する、いわゆる調整役として動きました。リーダーは推進力がある一方、やや強引な場面もあり、納得できない瞬間もありました。ただ、その「人対人」のせめぎ合い自体が、普段経験しづらい刺激として面白かったです。また、意外だったのは理解できていない箇所を素直に共有する姿勢がチームから高く評価されたことでした。1on1面談では、何を意識して動いているか、どこで困っているかを話すと、立ち回りに関する具体的なアドバイスがもらえます。1回目ではほぼ必ず指摘が入り、2回目までにどれだけ修正できるかが評価ポイントだと思います。僕自身も初回でしっかり怒られましたが、2回目は修正力を褒めていただけました。全体を通してなかなか今までにない経験だったので、この3日間参加できただけでも非常に価値がある、そんなインターンとなりました。
2次面接(最終面接)
社員さん1人、オンライン
変わった質問は特になくという感じ。学生時代に力を入れたこと、就活の軸、アクセンチュア入社後やりたいこと、デジタルを使ったらいいと思うもの、など。最後に逆質問。
スタンダードな質問に対してちゃんと準備をしていけば十分だと思います。インターンからかなり時間が経っていたので、インターンでの学びも復習しましたが、そこまで重要ではなかったです。物腰の柔らかい方だったので、まったく緊張することなく、いつも通りのパフォーマンスを発揮できたと思います。
内定(→辞退)
感想戦 〜博士のポテンシャル、ナメたもんじゃない〜
そもそもなぜアクセンチュアに応募したのか。理由は大きく二つあります。一つは、コンサルティング業界と博士課程で鍛えた論理的思考力には、必ずしも遠い距離はないと感じたこと。もう一つは、並行して進んでいたメーカーの博士早期選考に向けて、面接環境に慣れておきたかったからです。博士向け就活セミナーでコンサルティング業界に触れられたことを思い出し、ちょうど募集が出ていた2社に応募。その一つがアクセンチュアでした。当時は就活の主軸は製薬企業で、研究も止められない状況。特化した対策はほぼ行わず、むしろ落ちて学ぶことを前提に臨んでいました。
それにもかかわらず、なぜ内定に至ったのか。振り返ると、誇張なく博士課程まで進み学んだことで、気づかぬうちに形成されていたトランスファブルスキルが、選考のあらゆる局面で機能したからに他なりません。決して、特別なセンスや圧倒的な実績による勝利ではありません(悲しいかな、他社の就活結果を見れば明らかです)。面接にしても、同じ形式の経験こそ少なくとも、教授との1対1の対話で即座に論旨を問われる日常、研究室セミナー・学会発表での自己表現の鍛錬など、博士課程ではそれらが生活の基盤になっています。就活では面接練習文化というものがあるらしいですが、正直それを本格的に行う必要性を感じない程度には、実戦の場数を踏んできています。
インターンにおいても、学生同士のフィードバックでは論理的思考力、先読みの設計力、そして(年齢に由来する)落ち着きを評価していただけました。ただし、繰り返しになりますが、これらは特段突出した能力ではなく、同世代の博士学生間で見れば、ごく平均的な水準です。しかし、学部生・修士学生と同じ土俵に立てば、一歩リードするのは自然な帰結だとも言えます。
その上で、今回自分が良かったと感じている点は、博士という肩書を盾にせず、年齢差がある環境でも不必要な自尊心を持ち込まなかったことです。むしろ、21歳前後の学生が堂々と建設的に議論を展開する姿に驚き、心から敬意を持って接することができました。だからといって萎縮する必要もなく、こちらはこちらで積み重ねてきた経験への自負を静かに携えていればよいのだとも実感しました。
結論として、博士課程の学生であれば専門領域とは直接関係しない業界であっても、ここまで到達する過程で培った基盤能力は十分通用します。「専門性を活かす」という文脈は当然の発想ですが、一方で、博士課程で獲得したトランスファブルスキルを武器に別領域で勝負することもまた、博士教育の成果を社会化する一つの正しい形だと、僕は考えます。
ぜひ今回の僕の体験談が、これから就職活動に向き合う博士学生の視野を少しでも広げる材料となれば幸いです。

長々と読んでいただきありがとうございました。就活の健闘をお祈りしています。
